今日の芸術 2022

art curator 岡本かのんのブログ

芸術の主題:岡本太郎の芸術

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太陽の塔 Tower of the Sun


芸術の主題:岡本太郎の芸術

(約630文字・購読時間50秒)

 芸術家の岡本太郎(1911-1996)がデザインした《太陽の塔》は、1970年に開催された日本万国博覧会のシンボルゾーンにテーマ館としてつくられた。塔の頂部には金色に輝き未来を象徴する黄金の顔、現在を象徴する正面の太陽の顔、過去を象徴する背面の黒い太陽という3つの顔を持っている。過去・現在・未来を貫いて生成する万物のエネルギーの象徴であると同時に、生命の中心、祭りの中心を示したものである。さらに地下展示には人間の祈りや心の源を表す地底の太陽と呼ばれる第4の顔が設置されていた。テーマ館は、地上、地下、空中の3層にわたる展示空間で、博覧会のテーマである”人類の進歩と調和“を最も表現する場だった。テーマ館の中心《太陽の塔》は、博覧会全会場の象徴として人間の尊厳と無限の進歩、発展を表現したものである。

 岡本は太陽を主題とした作品を1960年台中盤から1970年代中盤にかけて集中して制作していた。岡本にとっての太陽とは「芸術は太陽と同じだ。太陽は熱も光も、無限に与える。日なたぼっこしても、“おい、あったかかったろう。じゃ、いくら寄越せ”なんて、手を差し出したりしないだろ?」という言葉を残しているように、自身の芸術論そのものを表している重要な主題となっている。

 作品の主題は、一目見てそれとわかる具体的なものばかりとは限らない。思想を展開するときには集めた素材を自分独自の観点から統一する必要がある。その統一の中心に置かれるものこそ主題にほかならない。

 

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