今日の芸術 2022

art curator 岡本かのんのブログ

博物館と知的財産保護

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 人間の知的活動によって生み出されたアイデアや創作物などには、 財産的な価値を持つものがある。 そうしたものを総称して知的財産と呼ばれる。 知的財産の中には特許権実用新案権など、 法律で規定された権利や法律上保護される利益に係る権利として保護されるものがあり、それらの権利は知的財産権と呼ばれる。知的財産権制度とは、知的創造活動によって生み出されたものを、創作した人の財産として保護するための制度である。知的財産及び、知的財産権は、知的財産基本法において次のとおり定義されている。

 

「第2条 この法律で「知的財産」とは、発明、考案、植物の新品種、意匠、著作物その他の人間の創造的活動により生み出されるもの、商標、商号その他事業活動に用いられる商品又は役務を表示するもの及び営業秘密その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報をいう。

2 この法律で「知的財産権」とは、特許権実用新案権、育成者権、意匠権著作権、商標権その他の知的財産に関して法令により定められた権利又は法律上保護される利益に係る権利をいう。」

 

 この法律の中から、博物館では著作権が大きく関係してくる。著作権とは、文芸、学術、美術、音楽の範囲において、作者の思想や感情が創作的に表現された・書籍、雑誌の文章、絵など作品を創作した者が有する権利であり、また、作品がどう使われるか決めることができる権利である。著作権法によると、著作物とは、思想または感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術または音楽の範囲に属するもの」であるとされている。自分の考えや気持ちを他人の作品のまねでなく自分で工夫して、言葉や文字、形や色、音楽というかたちで表現したものということができる。上手だから著作物になるとか、下手だから著作物にならないというような区別はなく、この定義にあてはまるものはすべて著作物である。著作物は自分の考えや気持ちを他人のまねでなく自分で工夫して、言葉や文字、形や色、音楽というかたちで表現したものであり。それにはさまざまな種類があり、博物館に収蔵された資料のデータベースも著作権の対象となる。著作権制度は、このような著作物を生み出す著作者の努力や苦労に報いることによって、日本の文化全体が発展できるように、著作物の正しい利用をうながし、著作権を保護することを目的としている。

 また、付随するものとして二次的著作物が存在する。これは著作物をもとにして創作された著作物のことで、こうしてできた著作物も、もとになった著作物とは別に保護される。外国の小説を日本語に翻訳したもの、小説を映画化したもの、楽曲を編曲したものなどが二次的著作物である。二次的著作物を作る場合は、原著作物の著作者の許可をもらわなければならない。例えば、二次的著作物を利用する展覧会の図録を出版しようとするときには、二次的著作物の著作者の許可のほか、原著作物の著作者の許可も得なければならならない。

 通常、博物館の収蔵品として絵画が売買されても、売主から買主へ移転するのは、物としての絵画の所有権だけで、著作権は、著作権を譲渡するという契約が行われていなければ、著作権者が引き続き持っている。したがって、物としての絵画を購入しても、著作権者に無断でコピーなどは原則としてできないことになるが、美術の著作物等の原作品の所有者による展示については、展示権という例外がある。これにより所蔵品の展示は著作権者からの許諾は不要になる。