今日の芸術 2022

art curator 岡本かのんのブログ

博学連携による生涯学習の推進

(約3600文字・購読時間4分30秒) 1965年にパリで開催されたユネスコの成人教育推進国際会議で、ラングランにより提唱された生涯教育の概念は、現在では学習者を主体に据えた生涯学習として普及している。生涯学習とは、自己の充実・啓発や生活の向上のため…

これからの博物館に期待される役割

(約1800文字・購読時間2分20秒) 1965年にパリで開催されたユネスコの成人教育推進国際会議で、ラングランにより提唱された生涯教育の概念は、現在では学習者を主体に据えた生涯学習として普及している。生涯学習とは、自己の充実・啓発や生活の向上のため…

博物館と知的財産保護

(約1500文字・購読時間1分50秒) 人間の知的活動によって生み出されたアイデアや創作物などには、 財産的な価値を持つものがある。 そうしたものを総称して知的財産と呼ばれる。 知的財産の中には特許権や実用新案権など、 法律で規定された権利や法律上保…

博物館における情報化

(約3700文字・購読時間4分30秒) 情報管理、公開として 文化遺産オンラインは文化庁が運営する、日本の文化遺産についてのポータルサイトである。2008年に全国の博物館・美術館にあるものを、画像込みで集めて、国民が喜んで使えるという目的で開設された。…

博物館によるデジタルアーカイブ構築の意義

(約1700文字・購読時間2分10秒) 博物館は文化財保護法第1条にその目的を「文化財を保存し、且つ、その活用を図り、もって国民の文化的向上に資するとともに、世界文化の進歩に貢献すること」と規定しており、保存と活用は文化財保護の重要な柱と考えられて…

博物館資料の保存の現状

(約1700文字・購読時間2分10秒) 博物館資料の保存の現状 博物館法の第4条では「学芸員は、博物館資料の収集、保管、展示及び調査研究その他これと関連する事業についての専門的事項をつかさどる」とされており、ミュージアムに収蔵された資料、つまり文化…

博物館資料の活用の現状

(約1700文字・購読時間2分10秒) 文化財保護法第1条にその目的を「文化財を保存し、且つ、その活用を図り、もって国民の文化的向上に資するとともに、世界文化の進歩に貢献すること」と規定しており、保存と活用は文化財保護の重要な柱と考えられている。保…

日本の博物館における広報活動について現況と展望

(約1400文字・購読時間1分50秒) 今日の美術館の経営において、マーケティングを含めた広報の役割は日に日に増していっているといっていいだろう。いくら素晴らしい展示をしたり、貴重な資料の展示を行なっていても、それが利用者に伝わらなければ意味がな…

『歌川国芳 浮世絵美術館』建設予定案について

歌川国芳《源頼光公館土蜘作妖怪図》 (約4000文字・購読時間5分00秒) 地域の特長 東京都区部は東京都の東部に23区からなる地域である。区部の中心部には都市機能が集積しており都心と呼ばれる。東京都の人口はおよそ1350万人で、周辺県にはベッドタウンが…

博物館教育論 幼少、少年期における博物館教育の重要性について

(約3500文字・購読時間4分20秒) 幼少、少年期における教育は、生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なものであり、 健全な発達のために必要不可欠である。それらの活動を通じて培われたものが基礎となり、生涯にわたる発達を支える。生涯学習においても、…

二つの岡本太郎美術館・記念館から見る、目指すべき美術館の姿

(約3200文字・購読時間4分00秒) 同じ岡本太郎(以下、太郎 1911-1996)の名を冠していながら、違った展示方法、イベントが行われている、川崎市岡本太郎美術館と岡本太郎記念館を、博物館法第二条に定められている規定の中から、収集、展示・教育の観点か…

大正乙女の女学生文化

(約1800文字・購読時間2分20秒) 女学生とは明治より始まった日本の旧制の女子学校教育の女学校の生徒のことである。江戸期以前の封建社会のもとでは、女性に学問は必要なく、家を守っていればよいと考えられていたため、寺子屋などでの初歩的なものに限ら…

芸術鑑賞 光琳と宗達の《風神雷神図屏風》

風神雷神図屏風 (約1100文字・購読時間1分30秒) 江戸時代を代表する画派として琳派という人たちがいる。狩野派、土佐派など血縁や師弟関係でつながる画派とは異なり、私淑によって同系統の技法・画風、作品群を残した俵屋宗達、尾形光琳、酒井抱一などの総…

明治維新による教育の変化

(約1000文字・購読時間1分20秒) 明治時代以降の学校とは一定の教育目的を達成するために、継続的、計画的に教育活動の営まれる組織であり、教育をする者、教育を受ける者、および教育活動に必要な施設設備を中心に構成される。教育は、もともと人間のあら…

巫女の口寄せ

恐山 (約850文字・購読時間1分10秒) 巫女とは神社で神楽や湯立てに奉仕するうちに祭神の憑依によって神託を述べる神社巫女と、口寄せという神仏、生霊、死霊などの憑依をうけ、託宣を行う憑依巫女に大きく分かれる。同じ憑依巫女でも日本各地で名称が違い…

芸術鑑賞 ティツィアーノ《ウルヴィーノのヴィーナス》

ウルヴィーノのヴィーナス (約1500文字・購読時間1分50秒) 題・《ウルヴィーノのヴィーナス》(1538) 作・ティツィアーノ・ヴェチェリオ(1488-1576) ルネサンス様式の豪華な宮殿を背に、向かって頭を左、足を右にして、裸の女性が寝台に静かに横たわって…

列島考古学 文字文化の定着-弥生から古代まで-

金錯銘鉄剣 (約1800文字・購読時間2分20秒) 弥生時代 古墳時代 古代 弥生時代 紀元後3世紀中頃までにあたる縄文時代の後、水稲農耕を主とした生産経済の時代で、日本の移動史が大きく変革するきっかけとなった時代でもある。大陸から北部九州へと金属器や…

列島考古学 移動する生活から定住する暮らしへ

(約1700文字・購読時間2分10秒) 日本列島における旧石器時代から縄文時代への移行は、自然環境と人類文化の両側面に見られた歴史的画期と言うことができる。この変化は、全球的な大規模気候変動期である氷期から温暖期への移行期に相当する。およそ2万年前…

列島考古学 旧石器時代における細石器の特徴とその製作上の効率性

(約800文字・購読時間1分00秒) 細石器とは、打製石器の一種で、小型かつ刃の特徴を持つ石器である。日本国内では一般的には旧石器時代後期に分類される。木や骨角の軸に数個はめこんで、ナイフ・槍・鎌として用いた。日本列島の旧石器時代の最終に現れたの…

江戸の歴史 近代化の地盤づくり

(約900文字・購読時間1分10秒) 江戸時代とは日本の歴史のうち江戸幕府の統治時代を指す時代区分である。期間は慶長8年(1603年)に徳川家康が征夷大将軍に任命されて江戸に幕府を樹立してから、慶応4年(1868年)に慶応から明治に改元されるまでの265年間…

京都の歴史 平安京遷都

(約1250文字・購読時間1分30秒) 平安京遷都は、天皇はもちろんすべての貴族・豪族達も移動させるという大規模なものである。政治と仏教の分断、人心の刷新などが考えられる。奈良の平城京では都を平城京から移さざるを得なかった深刻な問題が起きていた。…

ゲームと著作権について

(約1800文字・購読時間2分20秒) 2019年暮に任天堂が著作物利用ガイドラインを発表し、事実上、個人のゲーム実況動画と収益化を解禁した。近年動画配信サイトの普及により、ゲームのプレイ動画配信が人気を博ている。十年ほど前と現在では取り巻く環境が全…

書評 岡本太郎『沖縄文化論』

岡本太郎『沖縄文化論』 (約1200文字・購読時間1分40秒) 東京から初めて沖縄に降り立った岡本太郎(1911-1996)は、王朝文化、戦争、占領、基地など、さまざまな沖縄の生々しい現実を目のあたりにした。何か芸術家としてのインスピレーションを与えてくれ…

コロナ禍で厚生労働省の発表した“3密”を真言密教が批判しないのはなぜか

(約1400文字・購読時間1分50秒) 政府の発表した“3密”は既知だが、密教にも“三密”という言葉があることを知っている人もいるだろう。一部で「3密と軽々しく言うな、高野山は文句を言わないのか」という意見がある。“3密”とも表記される“3つの密”は2020年の…

美術批評 エッシャー時代のアートと科学的評価

M.Cエッシャー『昼と夜』 (約1600文字・購読時間2分00秒) M.C.エッシャーのリトグラフ《物見の塔》(1958年 462x295mm イスラエル博物館所蔵)、同じく、リトグラフ《滝》(1961年 380x300mm イスラエル博物館所蔵)が制作された時代は伝統的な絵画表現か…

芸術鑑賞 M.C.エッシャー《滝》

M.C.エッシャー『滝』(1961年) (約900文字・購読時間1分00秒) リトグラフ《滝》(1961年)もまた、M.C.エッシャーによって制作されたありえない図形である。まず作品に向かって中央やや上部の左手を見ると、滝が落ちるのがみえ、それによって水車が回っ…

芸術鑑賞 M.C.エッシャー《物見の塔》

M.Cエッシャー『物見の塔』(1958年) (約2000文字・購読時間2分30秒) リトグラフ《物見の塔》(1958年)オランダの画家である、 マウリッツ・コルネリス・エッシャー(1898年-1972年)によって制作された。二次元の絵だが、 遠近法による描写を見なれてい…

芸術鑑賞 葛飾北斎 《冨嶽三十六景 山下白雨》

葛飾北斎 『冨嶽三十六景 山下白雨』 (約1390文字・購読時間1分40秒) 制作時期 天保元~4年(1830-33年)頃 《凱風快晴》や《神奈川沖浪裏》とともに、《冨嶽三十六景》の三役に数えられる作品である。季節は夏、わずかに雪が残る富士山の山頂付近は、雲ひ…

芸術鑑賞 歌川広重《名所江戸百景 大はしあたけの夕立》

歌川広重『名所江戸百景 大はしあたけの夕立』 (約1350文字・購読時間1分40秒) 安政4年(1857)9月に制作された。「大はし」は隅田川に架けられていた新大橋のことで、「あたけ」(安宅)とは、対岸にあった御船蔵周辺の俗称である。ここには幕府の御船蔵があ…

芸術鑑賞 葛飾北斎 《富嶽三十六景 凱風快晴》

葛飾北斎『富嶽三十六景 凱風快晴』 (約1500文字・購読時間1分50秒) 制作時期 天保元-4年(1830-33年)頃 『富嶽三十六景』は、いわずと知れた葛飾北斎の代表作である。シリーズ名には“三十六景”とあるが、総点数は全46図にのぼる。『富嶽三十六景』は天保…