今日の芸術 2022

art curator 岡本かのんのブログ

列島考古学 旧石器時代における細石器の特徴とその製作上の効率性

f:id:okamotokanon:20220126164300j:plain

(約800文字・購読時間1分00秒)

 細石器とは、打製石器の一種で、小型かつ刃の特徴を持つ石器である。日本国内では一般的には旧石器時代後期に分類される。木や骨角の軸に数個はめこんで、ナイフ・槍・鎌として用いた。日本列島の旧石器時代の最終に現れたのが、この細石器を使った細石刃文化である。本州でこの文化のもっとも古い年代は静岡県休場遺跡の14,300年前で、終末は12,000年前にむかえた。北海道では約2万年前といわれている。この文化の存続期間は短かった。縄文時代の草創期まで存続した可能性が高い。この細石刃文化期の遺跡は、全国で500個所を超え、特に遺跡密度が高いのは北海道と九州で、近畿地方では遺跡数が極端に少ない。石材は黒曜石、砂岩、チャート、流紋岩、ガラス質安山岩、硬質頁岩など、その地域で利用できる岩石が用いられた。

 この文化は、細石刃核の形態や製作技術に地域的な変化が顕著であり、それが特徴である。 北海道の細石刃核は、湧別技法として知られる白滝型・札骨型・峠下型・蘭越型、忍路子型、幌加型、射的山型、紅葉山型などに類別される。この湧別技法やその影響を受けた細石刃剥離技術は、津軽海峡を越えて山形県新潟県茨城県など東北地方の北半分まで拡がっている。 白滝型、札滑型と呼ばれる2種類の細石刃核は、原材料の黒曜石などの原石を半月形または木葉形にし、これを両面から加工し 10cmほどの大きさの両面加工の母体を作る。この長軸方向に剥離を加え、平行に平らな面を作り出し、細石刃を剥離するための打撃面を用意する。こうして調整した石核の端に打撃を加え細石刃を剥ぎ取っていく。

 一方、西北九州を中心に、福井型と呼ばれる細石刃核が存在する。このほか南九州を中心に畦原型が知られる。 野岳・休場型細石刃核は、関東・中部地方から九州までの広い地域に広がっており、円錐形、半円錐形、角柱状などの形をしている。 また、船野型細石刃核も宮崎平野、大野川流域から近畿南部、東海を経て中部南半分、南関東まで広く分布している。これらは二面の作業面を形成しやすい技法である。

 

参考文献

・佐々木憲一ほか『はじめて学ぶ考古学』有斐閣、2011年

www.amazon.co.jp